Never Say Dieにて、連載小説を描かせていただいております、現代史の公文書籍館の大塚と申します。
ジョージオーウェルの『1984年』のパロディ小説を毎週一回程度、連載していきますので、御高覧の程を、よろしくお願いいたします。
今回は連載第二回目です。
今回よりも前の話↓
小説『一旧八四年』 02
彼ら痴呆老人たちは、年齢から察するに、『戦前』生まれということになる。しかしながら、僕が学校で習った限り、『戦前』というのは、ひどく文明の遅れた観のある時代だ。
貧しく、食うものに困り、みんな、畑に芋を植えてどうにか餓えを凌いでいたということを学校で習った。モノは不足し、なけなしの銭をつぎ込んで、闇市で石けんなどの日用品をどうにか手に入れることができるというレベル。トイレだってボットン便所の汲取式だし、今ほど水洗便所が普及しているわけじゃない。電車と言えば、せいぜい汽車=蒸気機関車のレベルだ。今程、路面電車が張り巡らされているわけじゃあない。
僕らの住む東京は、『戦後』になってはじめて、文化的かつ文明的な世界で生活できるようになった、というのが、この『1984年』の常識なのだ。
ともかく、今、『1984年』は『戦後』である。ただし、ここで注意しておきたいのは『戦後』、といっても、僕たちの知る『戦後』は、これをお読みの読者が聞き及んでいる『戦後』とは、すこし変わっているので、注意を要する。『戦後』というくらいだから、戦争があったわけだが、1984年より、およそ40年くらい前における戦争は、人間同士の争いではない。
僕らの世界の『戦前』と『戦後』とは、こうだ。
信じられるだろうか。
我々、人類は宇宙人と戦ってきたのだ。
宇宙から侵略してきた『宇宙人』どもと戦いがおわったのが1945年。
1940年。宇宙人の乗ったUFOが世界各地に飛来する。病原体をばらまき、電磁波を照射することで気候を操り、地震まで引き起こしたという。そして、UFOはついに、ヒトビトが住む街を一斉に焼き払った、ということが歴史の教科書に書かれている。
それまで相互いに争っていた僕ら地球人は、共に共通の敵と戦う事に目覚めたらしい。侵略者=宇宙人と戦うために一致団結して、空からの侵略者に対抗したのだ。互いに争っていた枢軸国と連合国は、国際連盟の調停の下、争うのをやめ、力を合わせて、宇宙人を追い払った。
宇宙人から世界をすくったのが、国際連盟が派遣した『ゴレンジャー』と『地球防衛軍』と『プリティー5』他、ヒーローの面々。そう、僕らのヒーロー、ヒロインだ。僕たちはみんな、世界に平和をもたらしたヒーローヒロインたちを愛し、そして、崇敬していた。もちろん、彼ら『正義の味方』を派遣した国際連盟もまた、僕たちの賛美の的だ。ちなみに、今は、国際連盟とは言わない。『NWO』、と、横三文字で言うのだ。New World Orderの略。日本語で言えば、新世界秩序である。
彼らNWOの統治機構の下、世界は一つになった。世界は、ブリタニア、イースタシア、ルシアニアの三つのブロックに分断され、統治されている。
その『戦後』、荒廃した東京に、ブリタニアから、マッカーサー元帥がやってきた。元帥主導の下、日本政府は、東北、関東、西日本の三州に分割され、地方分権が進む事になった。関東州の州都である東京都もまた二十三区に分けられ、以後今日にいたるまでの体制が完成し、各区それぞれが独自に統治を進めている。昔の日本政府のように膨大かつ用途不明な予算や腐敗、汚職も無い、計画的で無駄の無い完璧な世界がNWOによって造り出されたのである。
僕たちの住む東京は、このブリタニアの代理人=マッカーサー元帥の導きによって近代的で、文化的な生活を送ることが許されているということになる。
さて、申し遅れた。先ほどから僕、僕と言っていたが、僕が誰のことか、さっぱりわからなかっただろう。
僕の名前は、磯辺カツヲ。東京都は、第参区に住んでいる中学一年生だ。
実は、僕の住む街=東京は二十三区に分割され、それぞれが高くて大きい壁で覆われている。僕たち家族は、決められた場所での居住しか許されていない。生まれてこのかた東京三区生まれで、東京三区育ち。壁の外の世界は知らないし、知ろうとも思わない。壁の外に出るには、通行許可証が必要だけれども、その書類を発行して貰えるのは一部の特権階級、『甲』レベルのIDカードを持つ者だけだ。
小説『一旧八四年』 03へ、つづく


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